輸出支援
石巻市食品輸出拡大モデル事業
震災により失った販路
宮城県石巻市では、東日本大震災により深刻な被害を受け、石巻魚市場及びその後背地に集積する水産加工場は壊滅的な被害を受けました。全壊した石巻魚市場は、高度衛生管理を導入した海外マーケットにも通用する産地市場として復旧・復興し、平成27年9月に供用開始されました。また、市内の水産加工業や冷凍冷蔵庫業も復旧・復興が進み、営業を再開している企業もあります。
しかしながら、震災で休業期間中に失った販路の回復は難しく、平成25年では、水産加工品の生産量、出荷額ともに、震災前と比較して半分程度の水準でした。さらに、水産加工業に従事する者も震災前と比較して約半分程度の水準にまで落ち込んでおり、求人を募集しても集まらず、復旧したラインを十分に稼働できないという、深刻な状況に直面しています。
そこで、本事業は、水産加工業者等を中心に、石巻市の食品に関する事業者等が集まり、新たな販路獲得、継続的な販路開拓を目指し、共同して輸出事業に取り組むものです。
海外での取組み
初年度の平成26年度は、JETROや実務者を招聘した輸出の基礎と可能性についての勉強会の開催、また、輸出対象国をベトナムと香港にしぼり、市場調査を踏まえて試験的に輸出に取り組みました。平成27年度からは、香港、タイ、シンガポールを対象に、市場調査、展示商談会への出展、バイヤー等を招聘した試食商談会の開催、飲食店におけるメニューフェアの展開などに継続的に取り組んでいます。各国において、取引がはじまった事業者もいます。
また、香港では、ホヤプロジェクトとして、香港の有名シェフと協力し、香港人にあうホヤメニューの開発等を行いました。メニューの提案はできましたが、価格が高いことやホヤ自体が香港人に知られていないことなどの課題があり、まだ導入には至っていません。
タイでは、市内の石ノ森章太郎漫画館と協力し、食材だけでなく石巻全体のPRを行う試食販売イベントをバンコクで行いました。また、バイヤーやタイのマスコミを石巻に招聘し、市場や工場の見学、商談会の開催等を行いました。これまでに石巻を紹介する番組が2本企画・放映されるなど、タイでの石巻の認知度も高まっていると感じています。
シンガポールでは、高齢化社会の進行や健康志向などに着目し、医療・介護分野への参入を目指した取組みを行いました。市場調査、試作品の開発、JSIPでの発表・試食提供、病院関係者等へのヒアリングを踏まえた商品改良などを繰り返し、試食商談会の開催、訪問営業などを行いました。
共同輸出の体制の構築
平成26年度から27年度までは、石巻市の水産加工組合等が中心となり活動を行いました。取組みを進めるにつれ、石巻市の食品関係の事業者(生産者、加工事業者、販売者等)が一体となった取組みが必要との考えとなり、平成28年に石巻食品輸出振興協議会を設立し、共同輸出事業が本格的にスタートしました。この協議会では、公式HPやFacebookでの情報発信(日本語と英語)、問い合わせ等の窓口機能、輸出に向けた勉強会の開催等も行っています。
これまでの取組みにより、石巻市から海外への輸出額も徐々に伸びています。しかし、石巻市全体からみると大きな数字ではありません。取引の維持と販路拡大のために、新たな取組みの展開、共同輸出体制の強化が課題となっています。
輸出拡大モデル事業に関するサポート業務(平成30年度~令和元年度)、新しい東北先導モデル事業(平成26年度~29年度)
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期間
H26年度(2014年度)~H30年度(2018年度)
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クライアント
石巻市、石巻食品輸出振興協議会