社会調査
誰にも伝わる情報発信に関する調査研究
自治体による情報発信の重要性
自治体が住民に向けて発信する情報は、行政施策の情報や、社会生活に必要な情報、生命や財産に関わる情報など、多岐にわたります。どのような情報であっても、対象となる住民に確実に伝え、行政サービスの周知や利用促進、必要な手続きの遂行、必要な行動の誘導(例えば避難)などを促すことは重要です。しかし、自治体からの情報の中には、住民にとってわかりづらい表現や内容もあります。情報が正確に伝わらないことで、誤解を生じたり、必要な手続きに不備が生じたり、生命の危機に見舞われる場合もあります。そこで、本調査研究は、行政から住民への情報発信において、「誰にもわかりやすく伝える」ことを実現するための手法を整理することを目的に、有識者ヒアリング、自治体アンケート、住民アンケート、先行事例研究等を行い、現状や課題の整理、取組みの提案、検証等を行いました。
情報は相手に伝わらなければ、伝えたことにならない!
住民が感じるわかりにくさの原因として、「発信している情報に公文書の表現や用語が用いられていること」や、「文章が複雑で情報が多いこと」などがあげられます。「公文書」には、表現方法や語彙、書式などに一定の基準があり、一般には使用されない表現や独特の用語なども多く含まれています。また、自治体から住民に向けて情報を発信する場合、正確に伝えること、公平に伝えること、確実に伝えることなどが重視されます。そのため、法令や「公文書」の表現、用語を用い、必要な情報をすべて記すことで、情報の不備や間違いを回避し、苦情や問い合わせのリスクを抑えているものと考えられます。このため、文章が複雑になったり、情報が多くなったりし、住民がわかりにくいと感じることにつながっています。
しかし、情報は、相手に理解されなければ伝えていないのと同じです。情報をわかりにくいまま発信することは、住民の信頼を低下させます。また、業務が増えたり、作業効率が低下したり、他の業務に支障が出たりする恐れもあります。
わかりやすい情報発信に取り組むために
本調査研究では、自治体職員がわかりやすい情報発信に取り組むための考え方や手法について、以下に整理しました。
【わかりやすい文書作成の考え方】
●読み手の立場に立つ:常に読み手の立場を意識して、文書作成、情報発信をすることが大事
●情報を精査する:読み手が必要な情報を整理し、絞り込むことが大事(必要性の低い情報は削除)
●表現方法を見直す:文法や語彙、見やすさなど、伝わりやすい表現を意識することが大事
【取組みの進め方】
●職員一人ひとりが必要性を認識する:取組みの重要性や必要性を理解し、動機付けを行う
●仲間を増やす(組織内に広める):庁内研修や勉強会などを活用し、取組みの効果や課題などを共有する
●庁内推進体制を整える:担当部署を明確化し、全庁推進会議等の仕組みをつくる
【自治体として取組むために】
●一定の方針や基準を作成する:一律のマニュアルではなく、基本となる考え方と、着目すべき要点を整理
●組織内で展開するための仕組みを構築する:既存の研修や会議などを活用し、組織全体として取組む仕組みとする
誰にも伝わる情報発信に関する調査研究
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期間
H28年度(2016年度)
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クライアント
公益財団法人東京市町村自治調査会