構想・計画策定
東日本大震災漁業集落復興計画策定業務
東日本大震災により被災した沿岸漁業集落の再建
2011年3月11日に発生した東日本大震災では、沿岸地域を中心に多くのエリアで津波により甚大な被害を受けました。津波により被災した地域では、「防潮堤の復旧・建設や盛土等による地盤の嵩上げなどにより安全を確保し、同じ場所での復旧・復興を目指す地域」と、「住宅用途を高台等の別の場所に移転することで、被災地域を災害危険区域に指定し、住宅用途以外での復旧・復興を目指す地域」があります。本業務では、被災した沿岸の漁業集落のうち、災害危険区域に指定された地域の復興計画の策定業務を行いました。
沿岸漁業集落の再建にあたっては、住環境の再建は、防災集団移転促進事業等を活用し、高台住宅団地の造成や住宅再建などが進められます。一方、漁業生産活動の再建は、漁港施設等の復旧・復興に加え、漁業集落防災機能強化事業等を活用し、地盤の整備、漁業生産活動の場の整備、共同漁具倉庫の建設などが進められます。本業務は、漁業集落跡地において漁業生産活動の場を再建するために、漁業集落防災機能強化事業などを中心とした面的整備を行うための計画策定を行うものです。
事業規模の抽出と合意形成
計画の策定にあたっては、事業規模の算定が必要です。そのためには、漁業の将来像や再建方針、地区生活等を踏まえた上で、漁業生産に関する施設や生活に関する施設を配置・整理していくことが必要です。また、漁業生産活動を再開させるためにも、早期の復興を目指す必要があります。そのためには、合意形成を早急に進めることが重要です。
そこで、本業務では、地元住民や漁業者の意向を把握するとともに、被災状況や地域特性を踏まえた集落跡地の利用のあり方や水産業再建のあり方等について専門的知見から検討を行い、具体的な復興計画の立案・事業化を図りました。また、計画に必要な事業規模の設定にあたっては、漁業者の要望のみによる過大なものとならないよう、漁業生産活動等を整理し必要な用地の面積(原単位)を設定し、原単位から経営体数に応じた事業規模の抽出を行いました。
策定した計画は、復興交付金事業申請の根拠資料として、国の関係機関の同意を得られ、早期の交付決定が下されました。復興交付金事業により、漁業集落跡地の復興事業が進められています。
漁業生産活動以外のエリアの整備
宮城県東松島市宮戸地区の月浜集落では、地盤の嵩上げ、道路整備、共同漁具倉庫の設計、共同作業場の整備などの計画を策定し、その後、整備がなされました(写真参照)。しかし、整備された部分(漁業生産活動に必要な範囲)は、月浜地区のうち半分くらいのエリアです。残りのエリアについては、地域住民から観光客向けの体験施設や防災公園、市民農園などを整備するという案がありましたが、漁業集落防災機能強化事業では整備対象外の用途のため、実現することができません。別の地域でも同様の課題があります。今後は、このような未整備エリアの利用計画と復興事業のための財源確保等が必要です。
東松島市漁業集落復興計画策定業務(宮戸地区、東名地区)、女川町離半島部復興マスタープラン検討業務委託、石巻市漁業集落復興計画策定業務
-
期間
H24年度(2012年度)~H26年度(2014年度)
-
クライアント
宮城県東松島市、宮城県女川町、宮城県石巻市